紅王子と侍女姫  119

 

 

「ここは・・・・どこ?」

ディアナが窓から差し込む明るい日差しに目を覚ましたのは、翌日の朝だった。

しばらくの間、自分が何処にいるのか思い出せず、天蓋のある大きな寝台に寝ている事実にただ茫然とする。大きな窓から差し込む日差しに目を瞬きながらぼんやりしていると、水底からユラユラと浮き上がる水泡のように記憶が戻って来た。 

「あ・・・、国王陛下と謁見して」 

笑みを浮かべた国王陛下の顔が脳裏に浮かび、しかし、それからの記憶がないことにディアナは眉を寄せる。ドレスのまま寝台に横たわっていることに溜息を吐き、寝台から起き上がった。何があったのか分からないが、昨日のドレスを着たままだということは、またいつものように気を失ったのだろう。国王の眼前で失態を晒したことにディアナは蒼褪め、とにかくお詫び申し上げねばと急いで顔を洗い着替えを済ませるが、勝手にこの部屋を出ていいものか解からない。第一、国王陛下が会ってくれるのか、自分がどこにいるかすら判らないのだ。 

王宮教育を受けるために来たというのに、それがいつ、何時から始まるのか、どこへ行けばいいのかすら知らない。すべては昨日倒れた自分が不甲斐ないと、ディアナは立ち竦んだ。

 

叩扉の音に返事をすると、昨日部屋を訪れた侍女が朝食と共にたくさんの薔薇を運び込んできた。

驚きに目を瞠ると、ギルバード王子からの見舞いの品だと教えられ、倒れたことが王子にまで知られていると知り、恥ずかしくなる。 

午後、侍女に案内されて西翼宮を散策することになった。

先ずは明日から始まる王宮教育を受ける部屋に案内され、滞在する部屋からほど近いと知り、これなら迷わずに済むとディアナは安堵する。二階には驚くほど多くの扉が並び、遠方から来た他国の王族や貴族が宿泊する客室だと教えられた。三階も同様で、晩餐会や舞踏会が催される時は多くの賓客が来るので大変ですと侍女は笑う。

ディアナが滞在する部屋は西翼宮の一階に位置する。

王都一と言われる図書室は同じ一階の最奥にあり、重厚な扉を開けると贅を凝らしたテーブルや瀟洒なソファが点在する、驚くほど広い場所だった。窓布が下ろされた薄暗い部屋にはいくつもの書架があり、そのどれにも本が詰まっている。奥が見えないほど多くの書架に誘われるように足を踏み出そうとして、侍女に今日は使用許可をもらっていないので立ち入ることは出来ないと首を横に振られてしまう。

庭園へと移動したディアナは、その広大さと美しさに溜息を零した。高台にある西翼宮は王城の西側に位置しており、左側にある王宮や南翼宮、東宮からは離れた位置にある。西翼宮庭園の隣には大きな厩舎や幾棟もの従者宿舎があり、その奥には大きな湖が見えた。大正門を抜けると王都があり、そのずっと向こうに海原が春の日差しを反射して白く輝いて見える。

すべきことが見つからずにぼんやり景色を眺めていると双子騎士が現れ、気遣うような表情を浮かべた。

 

「ディアナ嬢。昨日倒れたって聞いたけど、もう大丈夫?」 

「熱はない? ゆっくり休めた?」

「はい、熱もありませんし、体調に問題はありません」 

双子騎士の気遣いにディアナは深く感謝した。二人が長くアラントル領地にいてくれたことに改めて御礼を伝え、明日から授業を受けることになったと双子に伝える。 

「授業がない日は早めに教えてね。また一緒に街に行ったり、乗馬をしようよ」 

「ダンスの練習には俺かエディが相手するから、楽しみにしてね」 

「・・・・ダンスも、するのでしょうか」 

王宮教育がどのような内容か詳しくは分からないが、貴族息女が受ける授業内容となれば、ダンスも必要項目にあるだろう。アラントル領地の発展のためだけでなく自身の成長のためにも、受けられる教育はどのような内容でも有りがたく受け入れるつもりだったが、ダンスは想定外。

姉が用意してくれた荷物の中には上等なドレスが入っており、いつの間に用意したのだろうと首を傾げたことを思い出す。姉たちは教育内容を知っていたのだろうか。 

「ダンスの練習? そりゃ、もちろんするだろうね。半月後にはエルドイド国の王宮で同盟国会議が行われるから、その時にはディアナ嬢も舞踏会に参加するだろうし」 

「・・・・え?」 

オウエンののんびりした声に、何を言われたのか直ぐには理解出来ずに戸惑うと、エディが眉尻を下げて同意するように頷くのが見えた。 

「何も心配はいらないよ。俺たちがディアナ嬢の一番そばで、前みたいに警護するから・・・って、覚えていないか。少し踊ったら退場出来るよう、レオンに頼んでおくから」 

「いえっ、私がそのような大切な場所に足を運ぶなど・・・・有り得ません」 

同盟国会議後の親睦を兼ねるだろう舞踏会に、田舎領主の娘が参加するなど天地が逆さまになっても無いと慄くが、双子騎士は互いの顔を見合わせた後、ディアナに向き合い揃って肩を竦めた。 

「でも、その時王城にいる貴族は全員参加が基本なんだ。多くのエルドイド国貴族が同盟国を歓迎していると示すため、互いの国民が親交を深めるために、ね」

「強制参加になるけれど、一曲・・・・二曲くらいで、あとはそっと抜け出せばいいよ」

 

振り向くと案内役の侍女も申し訳なさそうな表情で頷いていて、ディアナは口を閉ざすしかない。上手く踊れるだろうかと眉を寄せたディアナは、ふと顔を上げた。 

「そう言えば、前にも王城での舞踏会に参加したことがあると聞いた覚えがあります。詳しくは聞いておりませんが、国王陛下とレオン様と踊ったと。幾度か、そんな光景も思い出したような・・・」

「そうそう! レオンとだけ踊る予定だったのに、国王が立て続けにディアナ嬢と二曲も踊ったから、殿下がめちゃくちゃ焦った顔してたよな!」

「今度の舞踏会でも国王陛下はディアナ嬢を誘うかもね。で、殿下がまた焦る! 想像だけで笑えるね」

想像だけで蒼褪めそうだとディアナが身体を震わす横で、今回は同盟国の歓待がメインだから、そうならないだろうけどね、と双子が笑う。

「まあ、記憶がないディアナ嬢に無理なことはしないと思うけど、ダンス練習は頑張ってね」

「当日は俺とオウエンと、一曲ずつ踊ったらいいよ。その後、部屋まで送って行くし」

双子に曖昧な笑みを浮かべて別れたディアナは、大きな溜め息をひとつ吐く。

他国から来る王族や貴族とともに舞踏会に参加するなど想像もしていなかった。

姉はそれを見越して、ドレスを詰め込んだのだろうか。いつの間に作ったのか、とても豪華なイブニングドレスが入っていたのを思い出す。考えることが多過ぎて、どう整理していいのか解からない。 

ひとつひとつ着実に―――。まずは明日から始まる王宮教育を頑張ろうと、ディアナは頷いた。

 

午前中は老齢の講師からエルドイド国の歴史を学び、午後はダンスやピアノの修練を積む。授業内容は多岐に亘り、歴史の次は農作物や海産物に関しての最新情報や、同盟を為す他国の歴や貿易内容などを学んだ。他にマナーなどの講習を受け、夕食後には口を開くことも出来ないほど疲弊する日々を送ることになる。特に、同盟国で流行っているというダンスはテンポが速かったり密着度が高いものがあり、手足が思うように動いてくれずに苦労した。 

鍵盤に触れるのも久方振りで、流行曲など知らない曲を覚えるのが大変だった。勉強自体は、アラントルでも講師についていたせいか覚えが早いと褒められるが、問題はダンスとピアノだ。それでも見知らぬことを覚えるのは楽しく、もう少し余裕が出来たら図書室に行く許可をもらおうと気合を入れる。

疑問が生じたのは三日経った頃で、教育を受けるのがディアナひとりだけだということだ。

高名な講師をディアナだけのために王宮に招いているのかと慄くと、ダンスレッスンに付き合ってくれている双子が「問題ないよ」と笑う。

 

「アラントル領地に迷惑を掛けた分、ディアナ嬢はいっぱい学べばいいよ。それにさ、王都に住む貴族息女と一緒に学ぶなんて、気詰まりだろう?」

「殿下の婚約者と噂されている領地から来た令嬢なんて知れたら、それこそ大変じゃん。アラントル領にまで闖入者が現れるのを阻止するためもあるし、記憶が戻るきっかけ作りのためもあるしね」

「そういえば何か思い出した?」

「いえ。申し訳ありませんが、今のところは何も・・・」

双子の言うように、他の貴族息女と一緒に学ぶことを想像するだけで居た堪れなくなる。

あれだけ大量の書簡が届けられたのだ。アラントル領主の娘が、噂されている婚約者かと注目を集めるのは間違いない。噂は本当なのかと訊かれたら、いったい何と答えたらいいのだろう。他の領主息女とも話したことがない、自領の城で侍女仕事ばかりしていた自分が、王都の貴族息女とまともな会話が出来る訳がない。―――記憶が戻れば、それらは一気に解決できるのだろうか。

 

一週間も過ぎると幾分慣れてきたのか、夕食後には刺繍をする余裕が生まれてきた。レース編みや刺繍も教科に組まれていたが、これは得意分野だとディアナは笑みを零した。

針を動かしながら、ふと王子の顔を思い出す。

舞踏会にはもちろん王子も出席される。王宮主催の舞踏会がどのようなものか想像も出来ないが、王子の周りに集まる大勢の人の姿は容易に浮かぶ。そこには招かれた各国の姫君の姿もあるはずだ。 

直接、または手紙でディアナを好きだと繰り返してくれた王子の気持ちはとても嬉しい。そう素直に受け止められるようにはなったが、結婚となると話は別で、侯爵とはいえ田舎領主の娘と王太子が本当に結婚など出来るはずがない。国王も許可したといっていたが、無理な話だと思っている。ギルバード王子は唯一の嫡男として、王太子殿下としての責と義務がある。学んだ歴に登場する王妃は、全員が同盟国の姫君や公爵家令嬢だった。

いくらギルバード王子の母君が――――だったからと言って・・・・・。

 

「・・・? いま、何を」 

唐突に頭の中が真っ白になり、無意識に動いていた自分の唇の動きに目を瞬く。指に痛みを覚えて視線を落とすと、針で突いていたようだ。じっと見ていると、指先にはぷくりと赤い玉が出来た。ぼんやり見つめていると、何かに頭の奥を揺さぶられるような奇妙な感じに背が震える。 

心のどこか、とてもとても奥深い場所に穴が開いているような感覚。とても温かいものを失ってしまったような、言葉に言い表せられない哀しさも同時に込み上げてくる。これは失くした記憶に関しているのだろうか。思い出したらこの穴は塞がり、失った温かさを取り戻せるのだろうか。 

王城で過ごした半年分の記憶を失っていると言われても、日常には何の差し障りもない。王城から戻ってアラントルで過ごした日々に問題など何もなかった。 

だけど無性に泣きたくなる時がある。今まで泣いたことなどないはずなのに、当然のように、そこにあったはずの大切な何かが消えたような感覚に、胸が詰まる時があるのだ。

そんな大切なものが自分に在っただろうか。思い返そうとしても、生まれ育った城の中で掃除している自分しか思い浮かばない。 

「・・・ギルバード・・・殿下」 

口から零れ落ちた呟きに気付かず、ディアナはぼんやりと今にも零れ落ちそうな血を見つめ続けた。

  

 

 ***

 

 

「レオン! どうしていつまでもディアナとの面会許可が下りない! どうして書類が一向に減らない! ディアナを見舞うどころか、執務室に軟禁状態なのは、どうしてだ!」 

苛立ちも露わに睨み付けるがレオンは表情を僅かにも変えず、署名を終えたばかりの書類をギルバードの手元から持ち上げた。ディアナが倒れたと報告を受け、しかし容易に会うことはならないと言われ、それならばと面会の申請を頼んでから、すでに十日が経過している。 

「ディアナ嬢の体調は翌日には無事、回復されたそうですよ。その翌日から王宮教育が始まり、忙しい日々をお過ごしになっているとのこと。大変熱心な生徒だと、エルトル教授がおっしゃっておりました」 

「・・・なぜ、レオンがそれを知っている?」 

「おや、お忘れですか? 王宮教育をディアナ嬢に勧めたのは、この私。その後の進捗状況を把握するのは当然のことでしょう。ああ、御安心下さい。殿下を差し置いてディアナ嬢に会いに行ったりなど、しておりませんよ」 

「それは・・・・、わかっている」 

間近に迫った同盟国会議の準備で、ギルバードを含めた大臣らは多忙を極めていた。予測される質疑応答に関する書類作成だけで幾日も要している。互いの親睦と融和のための会議であり、二日間の会議の後、盛大な舞踏会が催される。その準備にも連日昼夜を問わず奔走しており疲労困憊だ。会議内容の詳細な把握はもちろんのこと、同盟国代表挨拶の順番や席順、舞踏会の式次第、宿泊部屋の割り当て、警備体制指示など、やることは山ほどある。確認作業をするレオンも、王宮に従事する大臣らも昼夜を問わずに走り回っているのは解かっている。 

だがディアナが回復したことを、すぐに報告してくれなかったのは性格が捻じれ曲がっているレオンの嫌がらせだろう。『道』を使うまでもなく、こんなにも近くにディアナがいるというのに、全く会えないというのは納得出来ない。 

「ディアナの記憶が戻るきっかけ作りは、どうなったんだ・・・」 

「それは殿下が為すべきことを全て終えてからに致しましょう」 

知らず零した呟きにも即座に突っ込まれ、ギルバードは溜息を吐きながら次の書類を手に取り、すぐに放り出す。見たくもない文字が躍る書類は机から床へと滑り落ち、レオンが眉を顰めて拾い上げた。 

 

「殿下、他国からの書類を床に落とすとは・・・、? 『貴国での舞踏会で、殿下とお逢い出来ることを心より楽しみにしております』・・・・何ですか、これは。各国に同盟国会議には見合いなどの話は持ち込まないよう、再三勧告しておりましたのに」 

ここ三十年近く、近隣国とは諍いも争いもなく表面上は穏やかな交流を続けていた。富国強国として知られるエルドイド国は各国と連携し、同盟を成し、更なる発展を遂げている。それが面白くないと暗躍する影を、有能な魔法導師が速やかに調べ上げて申告、または排除していた。同盟国にも魔法を駆使するものは存在するが、エルドイド国の魔法導師たちに敵う者はいない。 

現在のエルドイド国は畏怖される存在であり、次期国王となるギルバードの妃の座を、誰が射止めるかという話は未だ燻り続けている。年明け早々、ギルバードには心に決めた女性がいると宣言しても、数多の書簡に丁寧な声明文を返しても、未だこうして申し込みが舞い込む日々が続いていた。どうして理解しないのだと苛立つし面倒だが、国を介して舞い込む書簡には返事を返さなければならない。

 

「そういえば、舞踏会にはディアナ嬢も参加されるそうですよ。双子騎士を相手に、日々ダンスの練習に励んでおられると聞いております」 

「何!? 何だ、それは! 俺は聞いてないぞ!」 

「ですから、今お伝えしました。私も忙しくなければ、ディアナ嬢の繊手や細腰に触れる機会がありましたでしょうに残念でなりません。まあ、当日を楽しみに、今は我慢することと致しましょう」

  

しれっと横を向くレオンの肩が震え始めたのを視界の端に、ギルバードは苛立ちを机に叩き込んだ。

ディアナが滞在する階への立ち入りは基本的に身の回りの世話をする侍女と講師、双子騎士と警護兵だけに厳命している。その警護兵も、同盟国会議の際には近衛兵に任せるつもりだ。 

ディアナの記憶が戻り、王太子の婚約者として公言出来るようになれば、ディアナの警護に魔法導師を配することも出来る。そうなるとカリーナが就く可能性が高いが、彼女の安全は確実に確保される。そのために必要なのは、記憶を取り戻すための二人きりの時間だ。

・・・・それなのに。 

 

「アギナ皇国より、会議後に時間を取って頂きたいとの書簡が届けられておりますが、どうなさるおつもりですか? 捕らえた魔導士に関してでしょうが」 

「ぁあ? そんなの、会う訳ないだろう!」 

そんなことよりもディアナが舞踏会に参加するなら、国王の目を搔い潜って一回でいいから踊りたい。練習でもいいが、その時間はない。同盟国の王族だけでなく、自国の貴族も参加する大舞踏会なら、端の方で目立たずに踊ることが出来るのではないだろうか。

 

「あ、お伝えし忘れていましたが、今度の舞踏会ではディアナ嬢に間違っても近付いてはいけませんよ。声をかけるのも、見るのも駄目ですからね」

「はぁっ!? どうしてだ!」

甘い夢に馳せようとする寸前、レオンから投げ掛けられた言葉にギルバードは愕然とした。目を見開いたまま怒鳴り声を上げると、呆れたような顔が返ってくる。

「当たり前じゃないですか。ギルバード殿下がディアナ嬢に近付く。それだけで殿下の顔は笑み崩れ、周囲にディアナ嬢の存在が知れてしまいます。まだ記憶も戻っていない彼女が、周囲から注目されては可哀想でしょう? それに注目されますと、善からぬ者が近付く可能性も否めません」

「・・・ぐっ」

「殿下は遠くから、ディアナ嬢と私が躍るのを、指を銜えて観ていれば良いのです」 

甘い夢があっという間に破れ、ギルバードは書類が山を為す執務机を茫然と眺めた。

ディアナを呼び寄せた時期が悪かったのか、自分が放った言葉が原因なのか。いや、バールベイジ国の、あの太った卑しい肉塊が悪しき考えを実行したのが原因だ。あのまま銅像として我が国の領土にあるのでさえ胸糞が悪い。いっそのことバールベイジごと深海に沈めてやろうか。それとも焦土と化すのが相応しいだろうか。

 

「殿下。ディアナ嬢が無事に記憶を取り戻し、殿下との未来を受け入れて下されば、これから何度でも踊る機会は巡って来ます。それよりも頭を切り替えて、政務を片付けましょう。アギナ国の件はローヴ殿に対応して頂けるよう、殿下からお話下さい。引き渡しの条件などは国王陛下と御相談下さい。時間がありませんので、今すぐ王宮に向かった方がいいでしょう」

 

その前に急ぎの書類に目を通して署名捺印させるのを忘れない有能な侍従長に促され、政務をどうにか片付けたギルバードは王宮へと足を向けた。そこで国王から、レオンより残酷な言葉を告げられ、その場で座り込みそうになった。

 

―――――此度の舞踏会に参加するディアナ嬢には、ギルバードを含め、レオン、双子騎士の接近禁止を申し渡す。以前の舞踏会で、ディアナ嬢は多少目立ってしまった。ギルバードたちが近寄れば、面倒事が起こる可能性がある。ディアナ嬢の付添はローヴに一任する。

これ以上、彼女と彼女の大事な家族や故郷に迷惑を掛けたくなければ、己がすべきことは何か、わかるだろう? ギルバード。

 

つまりは、ディアナがギルバードの知らない男と踊るのを、指を銜えて黙って見ていろと言うのだ。前にディアナが参加した舞踏会で彼女が注目されることになったのは王が原因だというのに、「国王も近付きませんように」と宰相に言われると目を瞠って、「どうしてだ?」と首を傾げていた。

レオンも双子も近付けないのは賛成だが、では、いつになったらディアナに近付くことが出来るのか。

ギルバードはやるせない溜息と共に「どうしてだ・・・」と零した。 

  

 

 

 

 

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