紅王子と侍女姫  34

 

 

晩餐会が催される大広間は、左右に立つ円柱が等間隔に奥まで並び、ディアナの想像を遙かに超える広い場所だった。その中央に招待客用テーブルが配され、大広間を照らす大きなシャンデリアがいくつも高い天井から吊るされており、それらを目を瞠って眺めているディアナに、シャンデリアは魔道具だとレオンが教えてくれる。蝋燭を替える必要がないのねと口の中で呟き視線を落とすと、広間を縦断するような長いテーブルの上には既に豪華な宮廷料理が並び、輝きを放つグラスが置かれていた。テーブル上の灯りも魔道具だと教えられ、それは熱を持たずに煌々と輝いていた。

椅子を引かれて腰掛けると横には穏やかな表情の宰相と奥方の姿があり、ディアナに笑みを向けて来る。そして宰相夫婦の前には王弟夫妻と王位継承権第三位の息子リース・フォン・アハル、そして娘エレノアが既に着座しており、ディアナの姿に気付くと鋭い視線を投げ掛けて来た。

上座には王が座り、その右隣には王子が、左隣にはダルドード国使節団と王女が座る予定だというが、まだそのどちらも姿を見せていない。

楽隊が静かな曲を奏でる中、しばらくは喧騒が続いていたが高らかな金管楽器の音が響くと、着席していた皆が静かに立ち上がる。そして国王が大広間の奥から姿を見せると皆が一斉に低頭した。

 

「久し振りとなる国王主催の晩餐会だ。今回はダルドード国より使節団と王女が参られた。これからも両国間の交流が良きものであるよう願い、祝おうではないか」

 

王が振り向くとダルドード国使節団が姿を見せ、拍手の中を進み笑みを浮かべて着席する。拍手が一層大きく響き出したのは、ギルバード王子がダルドード国王女の手を腕に掛けて姿を見せた時だ。一部の貴族から歓声も上がり、皆の視線が二人に集中する。

王の合図により皆が着席すると、レオンと宰相夫婦の向こう、王の近くに王子が座り姿が全く見えなくなった。王からの挨拶が終わると給仕がワインを注ぎ始め晩餐が開始される。恭しく立ち上がったダルドード国使節団より挨拶があり、王女が気品ある笑みを見せ、再び大きな拍手が湧き上がった。

王女の緩やかに巻かれた黒髪は片側に流れ、その髪に飾られた幾つもの真珠が淡い輝きを放っている。イブニングドレスは全体的に落ち着いた色合いの紫で袖やドレープの真っ白なフリルが大人びた雰囲気を醸し出し、王女の笑みを更に上品に見せた。

宰相を始め、大臣らは晩餐が始まると同時に国交と貿易に関しての話し合いを始め、時に笑いを交えた楽しげな雰囲気が王を中心に広がっていく。 

目の前の豪華な食事を口に運びながら、ディアナは場違いな場所にいる自分に血の気が引いていく思いがした。レオンが小分けにした料理を皿に取り分けてくれるが、緊張が過ぎて味が解からない。

 

「しっかり召し上がりませんと、ダンスの時にふら付いてしまいますよ」

「は、はい、お気遣いありがとう御座います」

「そうだ、ディアナ嬢?」 

 

レオンが肩を揺らしながら笑っているので如何したのかと目を瞬くと、顔を寄せて囁きに近い声を出すからディアナも顔を寄せるしかない。ガタンと音がして、音のした方に注意が向きそうになったが、笑いを零しながらレオンが気にしないようにと告げてくる。

 

「ディアナ嬢はワインを召し上がりませんので?」

「ワインですか? 料理や菓子作りに使いますので味見程度でしたら出来ますが、本格的に口にしたことはありません。出来ましたら遠慮したいです」

「酔って頬を染め、碧色の瞳を潤ませるディアナ嬢も見てみたいものです。もしも酔いましたら私が心を込めて介抱致しますから、飲んでみませんか?」

「御許し下さい」

 

再びガタンと音がして、顔を上げるとレオンが楽しそうに笑う。

気にしなくていいと。

 

「少し飲んだ方がリラックスして踊れるのでは? それにアラントル領地のワインと違い、こちらのワインはダルドード国の特産品です。味見をしてみては?」

「では、少しだけ・・・・飲ませて頂きます」

 

レオンが差し出すグラスを受け取ると再びガタンと音が聞こえ、続いて「痛っ!」の声が聞こえる。王子の声だと気付きディアナが視線を向けるが給仕やレオン、宰相の身体で王子の姿は見えない。それが少しだけ寂しいような気がしたが、魔法の後遺症で手足が勝手に動く王子のためにも自分は姿を見せない方がいいと視線をワイングラスに落とした。

レオンに渡されたワインは濃厚な輝きを放ち、匂い立つ香りに驚かされる。一口飲むと咥内に広がる馥郁とした香りに驚かされ、レオンを見ると目を細めてグラスを空けていた。

 

「少し甘すぎるかとも思えますが、ディアナ嬢はどう思われますか?」

「とても甘いお品ですので菓子作りに使いたいです。林檎をフランベする時に使ったり、スポンジに含ませてしっとりしたケーキを作る時に・・・・あ! あの、いえ、とても美味しいワインで御座います」

 

頭の中に使えそうな料理や菓子が思い浮かんだが、これはダルドード国の特産品として今回献上された品だろう。大きな声ではなかったが、場違いな自分の発言が恥ずかしくて俯きそうになる。しかし大貴族ばかりが座る席で俯く訳にもいかず、手にしたワインをもう一口飲むと、頬が急に熱くなり急いでグラスを置いた。

 

「殿下も御自身の仕事を思い出したようで、使節団の皆様と御歓談を始めましたね。あちらの王女は十八歳。殿下と歳も近く、艶やかな黒髪に映えて輝く真珠が特産物の国です」

 

さらに海風を受けた豊かな牧草地が広がり、家畜も皆肥えているというダルドード国の話を聞きながら、王女の艶やかな唇が動く様を見つめてしまう。王子と何を語っているのだろうと考えるとどうしてか胸の奥が重く感じてしまい、ディアナは視線を移した。するとエレノアに鋭い視線で睨み据えられ、慌ててレオンに向き直る。自分は王子の婚約者だと言っていたエレノアの前には王子が連れて来た田舎領主の娘、そして並んだ席には他国の王女がいる。これでは苛立ちを抑えるのが難しいだろう。

レオンが顔を近付け、「視線は合わせぬ方がいいでしょう」と囁くから小さく頷いた。

 

ずいぶん長い時間座っていた気がしたが、やっとデザートが振る舞われ、晩餐の終わりが近いことが判る。晩餐が終われば大方の貴族が別室で歓談を楽しみ、または庭園を散策している間に大広間では次の準備が行われる。そして舞踏会だ。そこで一曲だけレオンと踊り、王に礼を告げると全てが終了だとディアナは細く息を吐く。

 

白ワインをスポンジ生地にたっぷり使ったケーキや様々なフルーツタルト、リーベスクノーヘン、焼きメレンゲの上にアイスクリームが乗せられたもの、ワインクリームが掛けられたスフレなどたくさんの品々が並ぶ。

どれも上品な味わいで、口に運んだディアナは泣きたい衝動に駆られた。自分の作る菓子など、目の前に並ぶ品々に比べたらただの田舎料理だ。城のみんなが褒めてくれたのを鵜呑みにしていた自分は、侍女として働いていたが領主の娘。褒めるのは当たり前だったのだろうと悲しくなった。戻ってからも侍女仕事を再開したいと思っていたが、大人しく部屋に閉じ籠っていた方がいいのかも知れない。泣きたい気分でデザートを食べ終えるとレオンが顔を近付けて囁くように話し掛けて来る。王城での晩餐では声を小さくして話すのが礼儀なのだろうかと首を傾げながら顔を近付けた。

再びガタンッと音がして、王子のお座りになっている椅子は傾いているのかと心配になる。顔を向けようか思った時、レオンが話し出した。

 

「ディアナ嬢、食事も済みましたので、一旦庭園に移動しましょう。殿下たちも歓談のため席を離れますし、他の貴族も場を移動します。また暫らく双子騎士と共にいて下さい」

 

殿下付き侍従長としての仕事もあるのだろうレオンは、席を立つと真っ直ぐに王子の許へと移動して行く。その時になってディアナは初めて王子の姿を捉えた。

王子は大広間に飾られた灯りを受けて輝く肩章や飾緒のついた黒に近い濃藍の盛装を身に纏い、気品と威厳を醸し出している。その姿は遙か高い場所に、とても遠い場所にいるのが当たり前の様な気がしてディアナは瞼を閉じた。そこへエディとオウエンが姿を見せ、庭園に移動するため立ち上がると、新たに作られた席に移動する王たちと使節団の姿が目に入る。

 

移動するために王子の腕に手を掛ける王女と、その王女を見つめる王子の姿はとてもお似合いだと思いながら、同時にそんな姿を見たくないと視線を逸らす自分がいる。逸らした先にはたくさんの貴族息女が王子とレオンを惚けた視線で見つめているのが判り、視線を彷徨わせた。ワインを飲んだためか頭が痛い気がして手を持ち上げるとイヤリングが揺れ、今度は胸が痛くなる。持て余しそうになる自分の感情に戸惑い、庭園に出るとやっと身体から力が抜けていく気がした。

 

「ディアナ嬢、顔色が悪いね。人が多いからもう少し奥に行こうか?」

「す、すいません。人酔いしたようです。あと、ワインを口にしたからでしょうか」

「飲んだって言っても二口、三口くらいだろう。ああ、デザートにもふんだんにワインを使っていたな。ちょっと使い過ぎだよね。ワインの味しかしなかったよ」

「ワインは確かに美味しいけど量は飲めないな。甘さだけが妙に口に残って。寒い地方に位置する国だから度数は高いし、基本甘いものが好まれるのだろうね」

 

二人の言葉にそうかと頷いた。一つの特産物でも国により違いや好みがあり、見方もいろいろあるのだと勉強になる。聞けば今回の舞踏会には近隣領地の領主や大臣、貴族、商人まで集まっているそうで、ただ豪華で華やかな宴だと思っていたディアナは納得した。耳を澄ませば、あちらこちらで他国の新鮮な特産品を速く流通する方法の話や、自領の特産品を多く扱って貰うよう勧める話も届き、社交場の重要性を理解する。しかし多くの者たちが話題にするのは王子の婚姻のことで、貴族息女の視線と関心は一段高い場所に設えた席に移り座る王子とレオン、王弟子息のリースに向けられていた。

 

大広間の長テーブルを移動させるために殆どの者が庭園や広大なバルコニーへ移動し、または十近くもある休憩用の応接室に移動していた。王を始め、王子たちは使節団と歓談をされているようで、庭園やバルコニーで涼んでいる者たちは遠巻きに眺めている。

その王子を一番近い場所から熱く見つめるのはダルドード国の王女だ。

王子はレオンらと共に使節団と何か話し続けているように見えるが、王女の視線は常に王子に据えられたまま、焦がれるように見つめ続けている。

 

急に今まで感じたことの無い痛みを胸に感じ、ディアナは大広間から視線を外して庭園の奥へと足を向ける。晩餐会に出席してから、重苦しい鈍い痛みを何度も感じている自分自身に戸惑ってしまう。王子が魔法解除の反動で手足が勝手に動くなら、この胸の重苦しさも同様なのだろうか。

解いたばかりに感じていた寂寥感は薄れたが、時折沸き起こる胸の痛みに戸惑い、何故か目が潤み、何度も何度も瞬きをする。

 

「しかしディアナ嬢は色が白いね。畑仕事したり馬を駆ったりもしていたのに」

「料理は上手いし、一緒に乗馬も楽しめるなんて最高だよ」

「でも、普通の貴族息女はなさいませんのでしょう? 乗馬は兎も角、厨房に立つことなど、こちらにいらっしゃる息女様は皆様されませんでしょう」

「相手が気にしなきゃいいんじゃないの? 俺は気にならない、寧ろ歓迎!」

「俺も! 馬の世話も出来るし料理も上手い。俺も歓迎だよ!」

 

二人に明るく言われ、ディアナは苦笑した。その後、二人の話題は晩餐に出て来た料理の話に変わり、各領地視察で食べた地元名産の菓子に飛ぶ。

その時、ディアナの背後に立つ貴族の声が聞こえて来た。顔を向けると、そろそろ用意が出来た頃だろうかと話しながら、大広間を指差して王子と王女の結婚がまとまれば大国は安泰だと囁く。そこへ他の貴族が隣国のマチュートル帝国にも妙齢の王女がいると割って入り、他の者がしかし王弟の息女は候補の第一に上がっていると語る。

 

双子騎士がアラントル領のワインをもう一度飲みたいねと笑う横で、ディアナは強張った笑みを浮かべて大広間に視線を向けた。いつの間にか王子は広間中央でたくさんの貴族息女に囲まれており、たくさんの色鮮やかなドレスが集められた花のようで、その花の中に立つ王子の姿をディアナは息を潜めて見つめてしまう。

 

昨日まで、いや今朝まで気さくに話をしてくれた王子が急に遠くに感じ、そう思ってしまう自分の疾しさが醜いと庭園へ視線を逸らす。アラントル領に王子が来た時は早く王城に戻って欲しいと、自分の姿を見られたくないと願っていたのにと、今は気付けば王子の姿を追っている自分が滑稽にさえ思える。自城にいる時と違い、何度も顔を拝する機会が多いから不躾に見てしまうのだろうかと思い、そして気付いた。

 

「エディ様、オウエン様。王城で行われる舞踏会ではいつもこのように殿下は皆様に囲まれるのですか。皆様、あの・・・・あんなに近くから殿下を見つめてらっしゃいますが」

「あー、そうだね。殿下が参加される舞踏会では、積極的に近付こうとされる女性に取り囲まれることが多いね。積極的に声もかけられているようだしぃ」

「王位継承者だし、唯一の王子だし、妃選びの噂もあるからね。お上品に声が掛かるのを待っていたら近寄ることも出来ないだろう? 舞踏会では皆、自分アピールに必死だよ」

 

華やかな貴族息女に囲まれていても、王子が躍るお相手はダルドード国の王女だろう。そう思うだけで再び重苦しくなる胸を押さえディアナは顔を曇らせた。この場から逃げ出したいような、まだ王子を見つめていたいような自分でも表現しにくい思いを抱え、眉を寄せたまま花に囲まれた王子を見つめた。

王宮楽団奏でる音曲をぼんやり聞いていると、近付いて来た侍従に恭しく声を掛けられる。

 

「ディナア・リグニス様。レオン・フローエ様より案内を仰せつかりました」

「・・・エディ様、オウエン様。レオン様がお呼びだということは、そろそろ舞踏会が始まるということでしょうか。わ、私、おかしなところはありませんか?」

 

強張った顔を向けると双子騎士は上から下までひと通りディアナを眺めた後、にっこりと笑みを浮かべて大丈夫だと太鼓判を押してくれる。その言葉に安堵し、ディアナは緊張を逃がすために大きく息を吐いた。

大広間の片隅に設けられた仕切りの幕を持ち上げられ中に入ると、レオンが優雅に足を組んでワイングラスを揺らしていた。エディとオウエンが「頑張ってね」と言い残して下がっていくと、逃したはずの緊張が舞い戻ってきて鼓動が激しく跳ね上がる。

 

「レ、レオン様。踊るのはいつになるのでしょうか。最初はレオン様の御両親である宰相御夫婦が踊られると伺ったのですが、その後、皆様が踊り始めてからですか?」

 

早く踊って終わりにしたいと願いディアナが尋ねると、レオンがテーブルにグラスを置き、柔和なのに妖艶にも見える笑みを浮かべて見上げて来る。

 

「よく御存じですね。仰る通り、最近の国王が主催される舞踏会では宰相である私の両親が一番に踊り始め、その後大貴族や大臣が踊り、徐々にホールは舞う花々で満ち溢れます」

「で、出来ましたら、ダンスは端の方で踊っては頂けないでしょうか」

「そのダンスですが、ディアナ嬢にとって今回が初めての舞踏会だと耳にされた御方が、それならば是非に自分と踊って欲しいと願い出ているので、ディナア嬢の了承を得たいと御呼び致しました。もちろん断ることも出来ますよ? どうなさいますか」

 

グラスの縁を指でなぞりながら口角を持ち上げるレオンが、楽しそうにヌガーを口へ運ぶ。そして目を瞬き「ディアナ嬢が作ったヌガーの方が美味しいですね」と真面目な顔になり呟いた。レオンの言っている言葉の真意が判らず、首を傾げながら菓子を褒めて貰った礼を告げると、上目遣いの彼の瞳が楽しそうに細まるから鼓動が跳ねてしまう。

そして、その楽しげな瞳がディアナの背後を見やり、その視線を辿るように振り向くとそこには国王陛下が笑みを浮かべて立っているから悲鳴が上がりそうになる。

 

「ディアナ・リグニス嬢。是非にとも、この願いをお聞き入れ頂きたい」

 

まさかの人物からの願い事に、ディアナはその場に崩れ落ちそうになる。大きく傾いた身体をレオンが苦笑しながら椅子へ運んでくれ、冷たい水を口に宛がわれて一口飲んだが頭の中はパニックのままだ。どうしてこうなったのか、どうしたらいいのか判らず、だけど目の前には国王陛下が心配げな顔で窺っているから返答しなくてはならない。蒼褪めたディアナが返答する言葉など一つだけだ。

 

「こ・・・、こ、国王陛下様、わ、私には無理で御座います!」

「おや、私の誘いを断ると? ディアナ嬢のダンスの腕前はレオンや双子騎士から聞いているが、私もなかなかだよ。魔法が解けた祝いの席だ、断るのは無しにして欲しい」

「た、大変光栄では御座いますが、で、でもっ! ・・・御許し下さいませ。緊張の余り、どんな粗相をしてしまうか、考えるだけで息が止まりそうで御座います」

「ディアナ嬢、断るのは無しにして欲しいと国王陛下が仰っておられますよ。良いではないですか。一生の記念になりますよ。本来でしたらディアナ嬢の初めてのダンスは私が手取り足取り腰取り踊る予定ではありましたが、残念ながら最高権力者には逆らえません」

 

レオンの楽しげな声を聞きながら、気が遠くなる感覚に素直に身を委ねそうになる。このまま椅子で気を失えたら、次に目が覚める時は朝になっているだろう。しかし国王に手を引き寄せられ勢いのまま立ち上がると腰を掴まれてしまった。

叫ぶ寸前で唇を噛み締めたディアナに、国王は優しげな笑みを向けて来る。

 

「私の娘たちも、初めての舞踏会は私が相手をしたものだ。だから父親を相手にしていると思い、気負うことなく愉しめば良い。さあ、音楽を流せ!」

 

控えの間の幕を上げられ、広い大広間に出来た舞踏会場に国王と共に向かうディアナは、周囲を取り囲む人々からの驚愕に見開かれた視線を痛いほど浴びながら項垂れそうな顔を必死に上げるしかない。同時に、ざわめくように誰何する声と鋭い視線を受け、これが夢ならいいのにと涙が浮かぶ目を何度も瞬いた。

 

 

 

 

 

 

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