紅王子と侍女姫  47

 

 

双子騎士が戻って来られないと伝言が届き、馬車で送られ部屋に戻ったディアナは手にした封筒を前に、溜め息を吐いた。国王陛下から直接受け取ってしまったのだから、今更断ることも出席しないという訳にもいかないだろう。 

眺めていてもどうしようもないと、気分を変えて入浴することにした。三種類のローズオイルのうち最後の一種類を、湯を溜めたバスタブに落とす。数滴で広がる甘い薔薇の香りに気持ちは落ち着き、立ち昇る湯気を見つめる内にディアナはなんだか可笑しくなってきた。

侍女として一生を過ごすのだと疑いもしなかった自分が、今こうして王城にいることが夢のようだとディアナは口端を寂しげに持ち上げる。王子からの好意や国王からの舞踏会への招待状。着ることなどないと思っていたイブニングドレスや騎士団宿舎での料理作りなど、夢にも見ないだろうことが展開されている毎日に笑ってしまう。

 

そして考えなくてはならない。 

魔法が解けた今、一応自分は侯爵家の娘だが実際は田舎領主の娘であり、大国の王太子殿下に求婚されるような立場ではない。本来なら王子の姿を見ることも、声を聞くことさえないだろう。ましてや触れ合うなど在ってはならないことだと知っている。 

好きだと言って頂けた言葉を胸に留めて王城から消えるべきだと思うのだが、黙って消えることは出来ない。王子が貴き御自身に見合う女性と出会うまで・・・・・。

いや、そんなに長い間東宮で御世話になる訳にはいかない。

 

浴後、髪を拭いながら国王から賜った招待状を見つめ眉を寄せた。

きっと国王陛下の誕生を祝うため、多くの貴族息女が足を運ばれる。そこで自分など王子には相応しくないのだと解かって貰えたらいい。今自分が感じている胸の痛みも感情も、きっと時間の経過と共に薄れていくだろう。ただ王子の瞳と髪色だけはいつまでも色褪せることなく思い出せたら、もうそれだけで充分だとディアナは招待状から視線を外した。

 

ディアナがローズオイルの効用をまとめていると、扉を叩く音が耳に届く。

扉を開くと衛兵の隣に見目良い侍従が立っており、王子から手紙を預かって来たと伝えて来る。急ぎ手紙を受け取り書かれた内容を確認すると、遅い時刻だが内密の話があるので急ぎ王宮庭園のガゼボへ手紙を届けた従者と共に足を運んで欲しいとあり、ディアナは簡易なドレスに着替え、手紙を運んで来てくれた人物と共に王宮へと急ぐことにした。

 

「お尋ねしても宜しいでしょうか。殿下からの手紙には特に詳しくは書かれておりませんでしたが、この様な時刻に、どのような用件なので御座いましょう」 

「私は手紙を届け、貴女様を御連れするように言われただけで詳細は存じません」 

「そうですか。では、殿下を待たせる訳にはいきませんので、早足でどうぞ」

 

王子を待たせているのに貴族息女らしく楚々と歩いている訳にはいかない。従者らしき男性を急かすと少し驚かれたが、自分がどう見られるより王子を待たせる方が辛いと急がせた。 

王宮庭園は広い。その広い庭園のあちこちに立つ庭灯が仄かな灯りを投げ掛け、昼間とは違った顔を見せる。従者の後を追いながら、舞踏会での出来事を思い出して頬を染めたディアナに声が掛けられた。

 

「あちらのガゼボにて御待ちで御座いますので、お進み下さいませ」 

「こちらまでの案内をありがとう御座います」

 

ずっと駆け足に近い動作で来たディアナは息を整えて、急ぎ身嗜みを整えた。

人払いの意味があるのだろうか、真白いガゼボには幕が掛かっており中の様子が周囲には見えないようになっている。いつもはディアナの部屋に足を運ばれる王子が、王宮庭園で話をするのはどうしてだろうと今になって不思議に思ったが、仕事が終わって酷くお疲れなのかも知れないと考えた。逆に今まで政務でお疲れの王子が、わざわざ自分の部屋に足を運ぶなど申し訳ないと思ったディアナだが、一国の王子の部屋に自分が行く訳にもいかない。

 

「殿下、大変お待たせを致し・・・・・。え、エレノア様?」 

「一介の田舎領主の娘が、どれだけ王弟息女を待たせるのかしら?」

 

ガゼボ内の椅子に腰掛けているのはギルバード王子ではなく、王弟息女であるエレノア姫だった。教えられたガゼボのはずだが、侍従が間違えたのかしらと驚きに目を瞬かせながらディアナは急ぎ低頭する。手紙には王子の署名はなかったが、侍従は確かに王子からの手紙だと言って自分に差し出したはずだ。一体どういうことだろうと鼓動を跳ねさせながら、そっと顔を上げた。

ガゼボ内の椅子に腰掛けたエレノアは顎を持ち上げ、蔑むような視線を投げ掛けており、ディアナは心の奥でやはりそうかと納得して顔を俯ける。

いつまでも滞在する自分に対し、疎ましいと思うのは当たり前のことだ。王子は自分には婚約者などいないと言っていたが、エレノアがそれを納得されているかは判らない。

 

「あ、あの、お待たせしてしまい、大変申し訳御座いません。あの、エレノア様が私などにこのような時刻、どのようなご用件があるので御座いましょうか」 

「私が貴女のようなものを呼び出した理由がわからないと? なんて愚かな田舎領主の娘なのかしら。それなら、はっきり尋ねて差し上げますわ。貴女、いつまでギルバード殿下の東宮に留まっているつもりなのかしら?」

 

腰を屈めたディアナに、苛立ちが含まれた問いが鋭い刃のように突き刺さる。初めてエレノアに会った時、自分は何度も妃候補として王城に来たのではないと伝えたが、舞踏会では国王と踊り、いつまでも東宮に留まっているのが現状だ。半月も過ぎれば不思議に思われるのも無理はないだろう。

 

「・・・・私は殿下が・・・・御納得されるまでの間、滞在する予定で御座います」 

「何を納得すると言うの? 他国の賓客を招いた晩餐会では宰相らの近くに座り、そのうえ国王陛下とダンスを踊るなど、田舎領主の娘にどのような仕掛けがあるのかしら。もしかして貴女、ギルバード殿下の正式な婚約者に決まったというの?」 

「い、いえ! あの、は・・・はっきりとは、あの・・・・」

 

今まで以上に深く低頭し、ディアナは首を横に振った。確かに王子に好きと言われ結婚して欲しいと請われたが、自分のようなものでは無理だと重々承知している。もちろん、婚約者という立場に明確に据え置かれた訳でもない。

 

「はっきりとは、何? では、どのような立場で東宮に滞在しているというのかしら」 

「私の立場は・・・、何と言えばいいのか判りませんが、ともかく殿下との御約束で、もう暫くの間だけ東宮に身を置かせて貰うことになっております。御目障りとは存じますが、御了承頂きたいと存じます」 

「殿下の婚約者になるつもりはないと言いながら、国王誕生会に出席するですって? 面倒だと毎年簡略した祝いを催しているだけの国王様が、今年は盛大に催すと発表されたわ。ダンスが楽しみだと大臣らに話されていたそうだけど、貴女がまた御相手するのかしら」

「そ、それは・・・・」

 

国王誕生会の招待状を貰ったのは午後のことだ。確かに騎士団宿舎厨房の皆の前でダンスの話はしていたが、盛大な会を催すなどは聞いていない。楽しみだと言われても、一介の貴族娘と国王がダンスを踊るなど遭ってはならないことだろう。

さらに苛立ちを隠そうともせずに傲慢に言い放つエレノア同様、王城に居る大貴族から見たら確かに奇怪な話だろうと眉を顰めた。先だっての舞踏会でも誰何する声が耳に届いていたし、国王とダンスをしたことで注目も集めているだろうことはディアナ自身も自覚している。ダンスを終えて王宮庭園で休息した時は、王子と王子侍従長が側に居た。それを王弟息女であるエレノアはどう思ったのだろうか。御心を苦しめるつもりなどないし、王子には相応しい人がいると解かって貰うためだけに私は・・・・・・。

 

いや、自分が王子の側にいたいだけだ。 

綺麗で力強く清廉で雄々しい王子の側に、もう少しでいいから居たいと願ったのは自分の方なのだと本当は解かっていた。滞在延期して欲しいという請いを理由に足を留めていたのは私自身で、それが周りからどんなふうに見られているかをもっと早く理解すべきだった。妃に相応しい女性は自分ではないと解かって貰うまでの間だけでいいから王子の御側に居たいと願った。黒曜石の瞳と夜色の髪を見つめる時間が欲しいと望んだのは愚かな欲のせいだ。 

突き詰められて明確となった不遜な自分の考えに羞恥が奔り、ドレスの裾を持つ手が震える。元はと言えば幼い自分が王子に言った言葉が原因。王子の心を傷付けた自分が、どうしてここで菓子や料理を作り、東宮庭園の薔薇の花束を貰ったりする資格があるのだろうか。申し訳ないと言いながら結局は王子の請いに甘えていただけの愚かな行いだったとディアナは唇を噛んだ。

 

「貴女は国王より直々に招待状を受け取ったそうね。それも本来なら自身の身分では有り得ないと存じているのかしら。自ら辞退すべきではないの?」 

「御断りをしても・・・・宜しいのでしょうか。国王様より断ることは許さないと」 

「国王から何を言われても断るべきでしょう。どんな理由があろうと、田舎領主の娘が参列するなど国の恥となるわ。・・・・・出来ないというなら手伝ってあげましょうか」 

「お手伝いで御座いますか?」

 

ディアナが顔を上げた瞬間、口元に濡れた感触が覆う。背後から伸びた手に腕を押さえられ、目を瞠ると縄が打たれているのが見えた。ガゼボを囲っていた白幕が取り払われ、幾人かの人がそれを持ってディアナに近付くのが見え、何をと思う間もなく瞼が重くなり身体中から力が抜けていく。頭の片隅に、明日は王子と出掛ける予定があったと浮かぶが、直ぐに闇に飲み込まれていった。

 

 


 

 

 ***

 

 

 

 

東宮王太子執務室にエディとオウエンの情けない声が響いた。

 

「殿下ぁ、報告書はこれでいーい?」 

「・・・・ああ、これで問題ない。で、グラフィス国の商船とは話が付いたのか」 

「商談のために来たって漸く話が通じたところで夜になったから、移動も出来ないし今夜は第二大港に停泊して貰うことになったよ。申請書類が港管轄局には届いてなかったようで、グラフィス国は事前に申請したと何度も言っていたけど、だけど幾ら探しても申請書類が見つからないんだよね」 

「管轄局でも探すよう言っていましたが、書類不備など本来あってはならないこと。今夜の停泊は漁業組合長も渋々許可を出しておりましたが、早朝の漁に支障が出ますでしょう」

 

報告書に目を通し終えたギルバードは眉間に皺を寄せた。 

港での騒動が治まったのは夜になってから。漁業組合側にしたら、突然現れた大型商船に漁場を荒らされた上に言葉は通じないし、強硬に停泊を求める相手に憤りを向けただけだ。事前に申請があれば商船が停泊する第三大港に案内する小型船が出迎え、漁場を荒らすこともなく、騎士団が介入するような問題など生じなかったはず。

 

「俺もいなかったしな。まあ、エディとオウエンが間に入ってくれて助かった。漁業組合のみんなには明日にでも詫びを伝えるが、書類が無いというのが引っ掛かる」 

「担当大臣は何も聞いてないと言っているし、だがグラフィス国側もすでに申請を出して許可は下りているの一点張りだ。これでは平行線だろう。それに、グラフィス国が言う、商談相手も第二大港には現れなかったのだろう?」

 

問題はそこにもある。商船が着く港と漁業組合が管轄する港は違うと説明するが、指示された港はここだとグラフィス国の商船は譲らなかった。話し合いは難航し時間が過ぎるばかりで、更に商談相手は一向に姿を見せず、商船を無理に動かすことは国同士の摩擦にもなりかねないと双子騎士が仲裁に入り、どうにか今夜だけ商談相手を待ちながら漁業組合管轄の港に停泊するということで折り合いを付けた。 

面倒事の出現に、明日の休みはどうなるのだとギルバードは不機嫌を隠せない。

ローヴから届けられたディアナ手作りの菓子を口に運びながら、憮然とした表情でレオンを見上げると流石に眉を顰めて首を横に振る。 

双子騎士も肩を竦め、頭を掻きながら菓子を口に詰め込んだ。

 

「兎も角、明日は漁船の邪魔にならないよう、商船には早く場所を移動して貰うように、もう一度説得してみるよ。大臣も一緒に向かう予定だし、乗組員たちの訛りが強くても俺は聞き取れるから通訳代わりに一緒に向かうね」 

「解かった。新たに停泊に関する書類を書いて貰うから、オウエンはその書類を持参するように。他に何か問題が生じるようなら直ぐに向うから、魔道具で連絡してくれ」

 

レオンに書類準備を頼み、ギルバードは眉間を指で揉み解す。明日の予定をキャンセルせざるを得ない状況に苛立ちが込み上げるが、愚痴を言っても仕方がないと立ち上がった。

 

「菓子の礼を伝えにディアナの部屋に行き、俺はそのまま休む。お前たちも休んでいいぞ。今回の件でディアナとの予定は流れたから、エディは引き続き彼女の警護を頼む」 

「それはいいけどさぁ、ディアナ嬢と乗馬する時間くらいは取れないの?」 

「あとさ、ディアナ嬢が料理を作るところを間近で見たいと思わない?」 

「・・・それは・・・・言うまでもなく是非見たいし、一緒に乗馬したい・・・・」

 

双子からの突然の問いに、目を丸くして真っ赤な顔で正直に答えるギルバードを見て、二人は楽しそうな笑みを浮かべた。 

「今度さぁ、東宮の厨房を貸し切ってもいいかな?」 

「殿下の休みに合わせてさ、ディアナ嬢と一緒に厨房に立つっていうのはどう?」 

双子の提案にギルバードは目を瞬かせる。口端を思い切り横に引き伸ばした二人が、楽しげに「どう?」と問い掛けるのに、直ぐに頷いた。

 

「それなら直ぐに貸切るぞ! レオン、明日の午後からの予定を少しずらせるか? いや、どうせなら丸一日休みにした方がいいな。そうだ、三日後の予定を全てキャンセルして厨房を貸し切って、東宮従事者全てに休みを与えて・・・・。前日に一緒に買い物に行くのもいいか。レオン、丸二日、休みを取れるように調整しろ。至急にだ!」 

「ギル殿下、三日後はマルティス公爵との晩餐ですよ」 

「急な用事が入ったと詫び状を出せ。晩餐など口実で、どうせ娘を見せたいだけだろう」

 

双子の提案に気を良くした王子は、卓上の書類に楽しげに鼻歌を零しながら仕事を進め始め、レオンは溜め息を吐いた後にマルティス公爵家の晩餐会出席を断るための書状を手早く認め、オウエンへ手渡した。

 

「殿下、残念ながら丸二日間の休日というのは卓上の書類量を見ても分かる通り、無理無謀な話しですが、急ぎの書類を綺麗に片付けた上で一日ということでしたら了承出来ます。ではエディ、三日後に東宮厨房貸切をすることを侍女頭と厨房料理長へ伝えて下さい。オウエンはこの書状を明日港に向かう前に、公爵家へ届けるように」 

「あ、俺らも一緒にディアナ嬢のご飯を御相伴に預かるっていうのは駄目? ディアナ嬢に訊いたらさ、優しいから、絶対に良いよって言ってくれそうだけどぉ」

「厨房の中は二人きりにしてあげるからさ、昼食だけでも食べさせて欲しいなぁ」

 

レオンの言葉に真剣な顔で書類と対峙し始めた王子に、双子が笑いながら話し掛けると冷たく睨み付けられた。レオンが双子の腕を引き寄せ、笑いを堪えながらそれは駄目だと話す。

 

「エディ、オウエン。そんなことをしたら殿下の愛馬に蹴られて踏み潰されてしまいますよ。ここ二日間は騎士団官舎にてディアナ嬢の料理を堪能されたのでしょう? ヘタレ返上のためにも三日後は殿下にお譲りして差し上げましょう」 

「そっかぁ、仕方がないね。じゃあ、明日もディアナ嬢に騎士団の厨房に来て貰って、何か作って貰うとするか。明日は鶏肉料理がいいなぁ」 

「てめぇら! 毎日毎日ディアナの料理を堪能しやがって!」

 

書類の山を崩しながらギルバードが吼えると、双子騎士はケラケラ笑いながら執務室から出て行き、署名が済んだ書類をまとめ終えたレオンが大仰な嘆息を零した。

 

「二人きりで丸一日過ごすことになると言っても、殿下が何らかの行動を起こさなければ進展はありませんよ。ここ数日、ディアナ嬢は双子騎士と御趣味の料理で楽しく過ごされているようですが、殿下との関わり合いは極僅か。引き留めるための策を思い付いた訳でもない様子ですし、東宮厨房貸切も双子のアイディア。全く持って情けないことです。・・・それと、国王が動かれたのを御存じですか?」 

「へ? 王が・・・・動いた? なんだ、それは」 

レオンからの台詞に羞恥と動揺で手から力が抜け、持っていたペンが書類の上を転がる。

 

「国王は今年の誕生会を盛大に行う予定だそうで、殿下の姉上様たちが嫁がれてからは簡素化されていた誕生会を今年は盛大に催すと決定したそうですよ。そして、もう既にディアナ嬢へ招待状を渡されたそうです。もちろん、ダンスの申し込みも予約済みと聞きました。さすが、国王陛下です」

「・・・なぁ!?」

 

初耳の内容にギルバードの頭の中は真っ白になり、ハクハクと口を開閉しながらレオンを見上げると 「宰相である父から聞いたばかりの情報です」と憐れむような視線で見下ろされた。ここ数年は王宮に従事する者たちへの慰労を兼ねた簡素な催しとして開いていた誕生会を今年は盛大に行うのは、間違いなくディアナ絡みだろう。

使節団を招いての舞踏会以降、ディアナの許には毎朝顔を出しているが、それだけで他には何一つはっきりとした行動を起こせていない自分だ。どんな言葉や行動が彼女の心を動かせるのかも判らないまま、政務の面倒事だけが積み重なる。

そんな自分を嘲笑うかのように国王が動いたと聞けば蒼白にもなるだろう。

きっと何かを仕掛けてくるはずだ。

時間を掛けてディアナの気持ちを自分に向けようと、結婚に結び付けようと思うだけで実際には少しも動けずにいる不甲斐無い自分にイヤガラセをするなら我慢も出来るが、彼女を巻き込むことだけは止めて欲しい。国王が動けば、周りがどう思うのか少しは考えろと言いたい。

 

「レオン、少し席を外す!」 

「このような遅い時刻に淑女の部屋を訪れるつもりですか? まずは先触れを出した方が宜しいのではないですか。例え彼女が殿下の訪れを快く迎えるとしても、です」

 

時計を見ると、既に十時を回っている時間だと判る。

騎士団宿舎で騎士のために大量の料理を作ったディアナも疲れて寝ているかも知れない。また夜着姿のディアナを抱き締めることになる懸念もあると、ギルバードはレオンの意見を聞き入れて先触れを出すことにした。

 

 

 

 

 

 

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